れっくすのつぶやき

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2019冬アニメレビュー「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」

2019年の冬アニメは、僕の見た限りでは「良作揃い」だった。かぐや様に約ネバ、えんどろ~やわたてんなど、どれも見ごたえのあるアニメだったと感じる。

ここでは今期アニメの中でも特に面白かったアニメの一つ、かぐや様は告らせたいをレビューしていく。

 

 

 

かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜

 

あなたはアニメに好きなジャンルがあるだろうか?もしあなたの好きなジャンルが「ラブコメディ」なら、かぐや様があなたにとって素晴らしいアニメであることは間違いない。週刊ヤングジャンプに連載されている同名のマンガが原作で、アニメーション制作は様々な名作を生み出している「A-1 Pictures」。すでに実写映画化も決定しており、放送前からかなり期待されていた作品でもある。

天才たちが集う秀知院学園を舞台に、生徒会長である白銀御行と副会長である四宮かぐやの「恋愛頭脳戦」が繰り広げられる、というのが本作のあらすじだ。

 

 

 

・ストーリー

~恋愛とギャグの親和性~

ブコメが「ラブコメディ」の略である以上、ラブコメでギャグは必要不可欠なものだ。僕はアニメの中でもコメディが好きで、これまで何度もアニメに笑わされてきた。しかし、ラブコメディというジャンルは、恋愛モノであることとギャグを両立しなければいけないという課題を抱えている。これが非常に難しく、どれだけギャグが面白くても恋愛部分が適当だと白けてしまい、ラブコメとして非常につまらないものになってしまいがちだ。もちろん逆も然り、どれだけ恋愛部分を面白く作っても、ギャグがお粗末だと笑えない。かぐや様はこの「ギャグと恋愛の両立」をうまく落とし込んでいると言える。

白銀御行と四宮かぐやは、お互い相手に恋心を持っているのだが、なかなか二人のプライドが邪魔して相手への気持ちを伝えることができない。つまり、タイトルにもある通り二人とも相手に「告らせたい」のだ。天才たちの恋愛頭脳戦の意味が、第一話で明かされる。これがかなり面白く、頭脳戦パート(お互いに相手に告らせようと画策するパート)では、二人の会話とモノローグが飛び交い、非常にテンポのいいギャグになっている。画面上には二人の心のイメージと呼べるものが度々登場し、ナレーターの声もシーンによってさまざまな顔を見せ非常に面白い。一方で、レビューを書くにあたって少し原作を読んでみたが、もう少しアニメ特有の絵的表現を入れてもよかったのではないかなというシーンもいくつか散見できた。

ブコメのラブの部分もしっかりと残されているのもかぐや様の良さだろう、各エピソードしっかりとオチがあり、その中には恋愛部分に振り切ったシーンも存在する。最終話付近では若干シリアスな要素も絡むが、そういったエピソードでも最後はしっかりと「ラブ」と「コメディ」でオチていたのは良かった。

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・演出

~ツッコミ不在のバカバカしさとは~

 個人的に好きなシーンがある。11話で公開されたエピソード、藤原千花は超食べたいだ。生徒会書記の藤原千花がラーメン屋でラーメンを食べるエピソードだが、このエピソードのギャグはアニメ中の全エピソードの中で一番面白かった。メインとなる白銀御行と四宮かぐやが登場しないにも関わらずだ。

一人で空腹の中ラーメン屋へと入店する千花、そこにいたのはとあるラーメン好きのサラリーマン、彼はいわゆる「ラーメン通」で、入店した千花を見るなり心の中で「ケーキ屋と間違えたのかな?」と嘲笑する。このエピソードでは千花はただラーメンを美味しそうに食べるだけで、ほとんどのセリフがこのラーメン通の男の心の中から語られる。無意識にラーメン通の「最適解」を叩き出していく千花に、男は段々動揺を隠せなくなっていくというのがこのエピソードの笑いどころなわけだが、このやり取りが本当にしょーもない。途中の劇画タッチの絵や壮大な劇伴、迫真のセリフ、ここでもやはり心理戦が行われるわけだが、そのすべてがしょーもないのだ。

しかし、このしょーもなさやくだらなさが、あらゆるギャグの面白さでありエッセンスになっている。かぐや様には物語の設定上明確なツッコミ役が存在しない、ツッコミ不在の中でこそ、このいい意味でのバカバカしさは光るのだ。このエピソードは本当に笑えて、最後は謎の感動まで覚えてしまった。原作では千花がラーメン屋から出た後にもう一ネタあるのだが、アニメでこのギャグをやるならばカットしたのはむしろいい判断だったと言えるだろう。

そしてかぐや様の良いところは、アニメ全編でこのバカバカしさが物語の設定と非常に高いレベルでマッチしていることだ。ただ、欲を言うならばもう少し劇伴にはこだわってほしかったし、良いシーンにはただマンガのコマをそのままアニメにする以上のことをやってほしかった。その点ではどちらも平凡かそれ以下だったと感じた。

 

 

 

総評

 『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』では、恋愛描写とギャグ描写のどちらも、非常に高いレベルで纏まっている。背景美術やセットデザインで混乱することもないし、第3話のエンディングでチカッとチカ千花の音楽にのって踊る藤原書記は素晴らしいアニメーションだった。キャラクターもそれぞれ魅力的で、一部掘り下げが足りないキャラクターもいたものの、不要だと思うようなキャラは一人もいなかった。演出も、白銀御行と四宮かぐやの二人きりのシーンではしっかりとしたラブコメの作りになっていたし、カットやカメラワークもちゃんと意図した場面で使われており、二人の恋愛の行く末を見届けたくなった。安易なパロディや唐突なシリアスもないので、誰でも気軽に見ることができる、まさに万人にお勧めできるラブコメアニメだと言えるだろう。

 

7.5/10 GREAT

 

良かった点

・ギャグと恋愛描写のバランスが良く見ていて飽きない。

・キャラクター描写がしっかりとされていてタイピカルなキャラがいない。

・OP曲とED曲の中毒性。

 

悪かった点

・アニメにした意義があまり感じられないカット割り。

・終盤の展開の微妙な分かりづらさ。

・セリフ以外での演出は分かりやすいが平板。