れっくすのつぶやき

マイペースに色んなことを書いてきます

E3 2021

 今年もE3が終了した。去年はコロナウイルスの影響で開催中止となったので実に2年ぶりの開催となった。

 

 僕も眠い目をこすりながらリアルタイムで見ていた。さすがにすべての配信を追うのは不可能だったが、有名どころはほとんど見た。で、終わった後に思ったのは、「E3って一体何のイベントだったんだ」ということ。

 まず、サプライズが圧倒的に少ない。ゲームのカンファレンスと言えば「大作ソフトの発表」というイメージが強いが、新規タイトルに関して盛り上がったのはベセスダの『Starfield』ぐらいだった。その他はたいしてパッとしない印象で、天下の任天堂マリオパーティメイドインワリオなどのシリーズタイトルを発表していたが、どちらも既存のシステムを焼き直しできるシリーズで、規模からしても大作というほどのものでもない。ゼルダの新作についても、前々から発表していたものの開発中画面をちょろっと公開しただけで、『ELDEN RING』と比較するとトレーラーをきちんと仕上げてきたという感じではない。「何も出さないのはさすがにまずいかな」という姿勢が見て取れた。

 実際に何も出さなかった企業もある。スクエニカプコンは期待されているものが一つも出なかった。スクエニは「FF16」、カプコンならモンハンのアプデ情報や「ドラゴンズドグマ」などのIPの続編がそれぞれ期待されていたが、ともにしょぼい発表に終わった。

 もちろんこれに憤るユーザーもいるだろうが、だからと言って両社を批判するのは筋違いだろう。スクエニカプコンもE3前にSNSで発表内容を告知しており、そこには重大情報を発表するなどどこにも書かれていない。言うなれば「大した発表はしませんよ」という予防線をしっかり張っているわけであって、それに対して「ほんとに大した発表がなかったじゃないか」とキレ散らかすのは滑稽でしかない。

 そういう炎上ともとれる荒れ方をしているのを見て思ったのが、どうもE3というイベントに対してユーザーと業界側の認識がずれているんじゃないかということだ。そもそもE3というのはユーザーのためのイベントというよりも業界人のためのイベントという側面がある。E3はもともと北米市場における家庭用ゲームとPCゲームの流通向け「商談会」と、メディア向け「発表会」として発足したイベントだ。主催は米業界団体のエンターテインメントソフトウェア(ESA)協会だ。日本よりも国土が広く、物流や宣伝コストがかかるアメリカでは、年末商戦にむけて重点ソフトを流通会社やメディアにアピールし、受注をとったり、取材を増やす機会が求められた。こうした背景で生まれたのがE3だ。それがインターネットの普及やゲーマーの盛り上がりに呼応する形で発展し、「E3=大作発表の場」というイメージが出来上がった。今の状態は言ってしまえばユーザーが勝手に期待して勝手に落胆しているにすぎない。期待するもしないも勝手だが、それを企業にぶつけて怒りを発散するのはおかしな話だ。

 しかしまだ疑問は残る。E3がメディア向け「発表会」としての役割も持っているなら、なぜ大企業は軒並み大した発表ができなかったのか。これには、「したくてもできなかった」という面と「そうする必要がなかった」という面があると思う。「したくてもできなかった」理由は明確で、コロナウイルスによる開発の遅れのせいだろう。ゲームだからリモートでも作れる、というのは所詮イメージに過ぎず、実際のゲーム作りにおいては対面じゃないとできない部分が多い。しかも日本は緊急事態宣言中だ。E3に合わせて開発するようなスケジュールが取れず、どうしても内容が薄くなるのは必然だろう。タイトルだけ発表したはいいものの、開発に多大な時間がかかり、発売延期に陥ったり初期のティザーからは全く別物のゲームになってしまう作品は、「FF15」や「サイバーパンク」の例をみれば十分だろう。大作であればあるほど、できてもいないものを堂々と発表するのは、開発期間が長くなっている傾向がある現在において非常に危険だ。その点では、任天堂ゼルダの映像をよく公開したなと思う。任天堂のプライドのようなものを垣間見た気がする。コロナがなければ、ゼルダ新作ももう少しいろいろと見せられる状態に持って行けたのではないか。

 「そうする必要がなかった」というのは、近年のE3がゲーム発表の場として存在感が薄くなりつつあるという問題と結びつく。任天堂Nintendo Direct、SIEはState of Playという「自社の発表の場」を既に作っており、任天堂はE3というタイトルをつけてはいるものの「ダイレクト」として発表しているし、SIEに至ってはE3に参加していない。さらに、両社ともにプラットフォームホルダーであり、サードのソフトに関してはどちらかのゲーム機、つまりSwitchかPS5で発売される。まだまだ「ゲームは家庭用ゲーム機で遊ぶ」というイメージが強い日本において、日本のソフト会社としては「わざわざE3で情報を小出しするよりもプラットフォームホルダーの発表でドカンとトレーラーを発表するほうが注目が集まる」と考えるのは至極当然の流れだ。結果的にXboxの発表が一番盛り上がったのも、日本の会社のそういった考えの結果ではあるまいか。

 僕の印象では、最近のE3は「ゲームを発表する場」というよりも「業界の交流の場」として機能していた。ロサンゼルスに集まって、ソフトメーカーやメディア、ファンがそれぞれゲームというものについて様々な交流をする、というのがE3の本質であり、新しいゲームを発表してみんなでHYPEするというのは、E3というイベントを考えればむしろ傍流にある気がしていた。「今年のE3は大したことなかった」という感想で溢れているのは、今回のE3がオンライン開催になって、そういうE3の役割の変化が分かりやすい形で表出しただけではないか、というのが率直な感想だ。

 それとは別に、今年のE3はミラー配信が公式で禁止された。

automaton-media.com

E3が発表の場ではなく交流の場であるという近年の動向を考えれば、ミラー配信によってコミュニティーの交流を促すのもまたE3の役目だろう。もちろん権利的な問題が第一にあるので一概にミラー配信を許可しろともいえないが、オンラインイベントであるということも加味すれば、多くの人に見てもらうことはE3にとってメリットにもなりえたんじゃないかなと思う。

 

今E3は、「それが一体何のイベントなのか」という僕が抱いた疑問と同じ問いに、自らが直面している状況ではないか。状況は変化していっているものの、それができた経緯を考えれば、むしろあるべき姿に戻りつつあるような気がする。来年のE3がどのようになるのか想像できないが、とりあえずは今年発表された情報を振り返りながら、まだ見ぬソフトに思いをはせようと思う。

 

 

 

ソニックカラーズのリマスターが楽しみです。